令和 新 美味しい 茶の淹れ方実用編

どうせ飲むなら美味しく飲みたい、急須で淹れたお茶を飲もう!
お茶を如何に自分好みのお茶として完成させるか、農作物である茶葉は毎年違い、また保存していても変化していく、、茶葉の違いのせい?にするよりは淹れ方で対応できるのではないかと思い様々な方法で実験をおこなっています。

(以下、お茶きん秘伝のいれ方より )

はじめに

 お店に来店して下さるお客様が、お茶を詰める間の一服のお茶を飲み終えて言うには、、、、

 『家では同じお茶なのに店で出してくれる様に、上手にはいらない、いれ方がさすがにウマイですネ(^^;)』
私は「お茶は同じなのに何故?お客様の方ではおいしく戴いていないのだろう?」と日ごろから疑問に思っていた
そこで様々な角度から考察したみた

実践 ポイントその1
新茶時期とそれ以外の時期では温度がちがうと特徴をいかせる
新茶時期は香りが命なので幾分高めの温度で入れると香りたつ、いつもの湯の温度が60度ならな65度、70度ならば75度くらいがベスト
ただし、このように温度を高くしたぶん待つ時間は多少短めで。また新茶時期を外れた場合は幾分お茶(茶葉)本体に火が入っているので温度はぬるめでじっくりと淹れるといい
 

どうしてか

 『そうですか、どんなふうにいれています?』と尋ねると、いれるさいにお客さん必見お湯の温度には注意しているとの事、それでも『美味しく入らない』という方は急須にいれる湯の量に問題があることがわかった。

 実際にお客さんに普段やっているように淹れてみて頂くと急須に入れるお湯の量が多い事が判った。 また急須の傾きが急で茶葉のすべてがアミに寄ってしまい結果葉が詰まりどんどん濃くなり渋くなってしまうこともあった(テクニックは後で教えます)。
まず、お湯の量が多いと濃度が薄くなり色が出ないからと言って待っている、そして待ちすぎて今度は葉が開いてしまって苦くなってしまう。ポイントは【茶葉の量】と【湯の量】のバランスがよくないのである。

そこで 秘 伝 伝 授

例えば3人分のお茶を淹れると仮定して湯の温度、茶葉も適温適量を守り、2合位の急須(360cc位で握りこぶし程度)ではお湯を注ぐ時に多くても急須の半分程の量でいれて欲しい、これはいれる人数 によっても違ってくるが、面倒くさいからといって急須の許容量近くまでお湯を入れてしまい、お湯の量が多すぎて 濃度が薄くなり味気のないお茶が出来上がってしまう。

 旨いお茶を淹れるにはまず、少なめにお湯をいれ3人の茶碗に均等に注ぎ分け次にまた急須にお湯を入れ3人に注ぎ分けるとコクのある美味しいお茶を淹れる事が出来る。但し2回目からはお湯を入れてすぐに器に注ぎわけること。
 さらにコツは1回目はお湯を急須にいれたら、浸出時間後にそのままの状態で注がないで急須を数回ほど(アニメーションを参考)水平に振ると深むし茶の場合は急須の中の濃度が均一になり色が良くなる、ここは重要なポイントになる。(特に一人分を淹れる時には急須の中の茶葉のブランコ運動が少ないので少し廻してあげるとよい)


 

  どちらが好み?  
左はブランコ運動無しで淹れた茶碗 右はブランコ運動をして淹れた茶碗
     

※色が出ないからといって急須を洗濯機の様に廻している方が時々いるが廻しても茶葉の芯の味は時間が経たないと出て来ないので無意味である。

急須はお湯を入れてから動かしてはならないと教わる、 雑味がでて渋苦味がでてしまうからどといわれている。玉露ではその甘みという最大の特徴を引き出すために揺すらないし茶葉の繊維が分離し苦味を促進させるからとか、水色の理想は「山吹色」とか言われているからだと推測されるが昔は「普通蒸し煎茶」の製造法が主流だったためだと考えている、 「玉露」の淹れ方や審査方法を通常のお茶にまで当てはめたためその禁止事項のようにいわれてきたが現在のように基準は無いが「中蒸し」や「深蒸し」など7割近く深蒸し 系が流通しているので淹れ方も違ってきておかしくないだろうと思う、「深蒸し茶」の最大の特徴である緑色を楽しむならば多少の振動は必要だろう(まあ注ぎ分け時に何べんも茶葉が動くのであまり意識しなくてもいいかもしれない)

また数人分を入れるなら右のアニメーションの様に2回から3回位に分けてそれぞれの茶碗に注ぐと急須の中で湯が行ったり来たりするので (水平往復運動(ブランコ運動))茶葉も茶漉しのアミにへばりつかず詰まらなく出る。 濃度と味のバランスが良く、上手に入れることができる。要は一気に注がないことだ!!



 
 

一気に注ぐと、、、
同じ茶葉を6g入れて120ccのお湯で淹れて検証

 
左の急須は一気に一度で注いだ茶葉の状態、急須のフタを閉めて注ぎフタを空けてみたところ上の棚の方まで茶葉が到達していることがわかる。
このような状態ではお茶はスムースに口からでてこないし急須からも漏れ出し美味しくはいらない。
右の急須は数回に分けて淹れた茶葉の状態
急須のフタを開けたところ茶葉はアミの方に寄ってはいるがアミを塞いでいない。
このような状態であれば急須の口からはスムースに浸出された美味しいお茶が出てくる。
(急須のフタをしているとわからない方は注ぐときにフタを外して淹れてみてくださいネ この効果は意外に有効で、茶葉の動きが把握できるばかりではなく、一気に傾ける動作が抑制(お湯が急須からこぼれてしまうのではないかという心理的作用)されのでお勧めです!慣れてきたらフタをして挑戦)





検証その1

急須の振動による濃度の違い 3g 30秒 80℃

  回転数 濃度(三回平均)ppm  
平アミ急須 581 薄い味
平アミ急須 水平回転(時計回りで10回) 767 コク甘み有
平アミ急須 水平往復運動10回 795 コク甘み有り(水平回転運動より少しだけ渋い)
カゴアミ急須 水平回転(時計回りで10回) 598 薄い味だか少し苦味がある(急須の大きさに沿っていないアミ使用)

本当に急須を振らない方がいいのか?

「急須の振動)による濃度の違い」は味に大きく影響してることがわかる、廻し注ぎ方式でもサーバー方式でも葉を物理的に動かしてやる事で(数人を淹れる廻し注ぎ方式では自然に茶葉は動くことになる)コクのある美味しいお茶がはいる、おもしろのは回転運動よりも水平運動の方が浸出が若干早い点である、これは抹茶のお手前でもブクブク茶でもそうだが茶筅を手首で回転させるよりは上下または左右の往復運動の方が良く混ざるという現象が実証できた。
また、茶葉を回転させない時とカゴアミ急須では値がほぼ一緒くらいであり急須に合わない(急須の形状や大きさに合わないという意味)カゴアミを使用すると茶葉の浸出はしにくい事もわかった。 さらにほぼ同じ濃度なのにカゴアミの方が苦渋みが少しあるという事はやはり回転(振動)により僅かだが苦味が出てくるようである。
※コクとは不思議なもので甘さ+渋苦味の総合評価であると思う

もう少し検証してみた
茶葉のサンプルを取るときになるべく茶葉が偏らないようにかき混ぜ最終的には重さだけで同じサンプルを作り比較してきたが本当に粒度による違いがでないか疑問に思っていた、均一な同じ条件で実験してみたいとかねがね思っていたのでなにかいい方法はないかと考えた。(もちろん粉末状にしてしまえば誤差はなくなるが急須で淹れるという工程ではむいていない)

茶葉の成分が均一にでる方法 、、同じ集合群から同じ長さの葉、形状を選択し茶葉1本1本ピンセットで選択採取、、1時間ほど試みたが途中で断念(自然な素材なので同じ茶葉を選択するのは無理がある)、、何かいい方法はないか!そうだ擬似的な人工茶葉を作ればいい、でもここからが大変であった
茶葉は乾燥していてお湯に触れることで茶葉の中にお湯が浸透して壊された細胞壁から成分がでて行く、、これと同じような物は作れないだろうか?
細いストローを15mmに切断し中に成分にみたてた抹茶と混ぜた寒天を入れようとしたが途中の工程で中からでてしまい失敗
マカロニに抹茶を詰めてみたが同じように抹茶が入っていかない、、
あるとき、店を掃除しているときに埃を吸着する掃除シートを使っていて「これだ!」とひらめいた!!
そこで、人工茶葉の作り方

 5mm幅に切断する
 短冊状に数本用意して長さを20mmで揃えて切る
 人工茶葉の芯の出来上がり
 茶缶に芯を入れ抹茶1gを投入しフタをして良くシェイクする
 見事に繊維の隙間に均一に入り込み人工茶葉の出来あがり!
(同じ構造で同じ成分量の茶葉の出来上がり)



 
  人工茶葉を同じ分量急須に入れ60ccお湯をいれて60秒後に注ぐ
(同じ型番の急須で同じ温度、湯量、浸出時間)
※成分=濃度と仮定
左は静かに注いだ
(注ぎ始めてから10秒で終了)
右は3回に分けて注いだ
つまりブランコ運動
(注ぎ始めてから10秒で終了
  結果 一煎目は
右の方が濃くでている
一煎目とは急須に一回お湯を注いで茶碗に注ぐこと
以下同じように淹れてみる、、
左が静かに入れた茶碗 右は3回に分けて注いだ茶碗
  一煎目、二煎目、三煎目上から下へ茶碗を並べてみた  

考察
一煎目、二煎目まではあきらかに右側(急須のブランコ運動有)が濃い、三煎目はほぼ同じ位、四煎目からはしだいに少しだが左側(急須ブランコ運動無)が濃くなっていく、また七煎目(最後)はどのくらい成分が残っているのか両方とも10回急須をブランコ運動させてみた、まだ左側は十分に濃くでているので残っている成分があることが分かる。
お茶の水溶性の成分であるカテキン、カフェイン、アミノ酸などは大体三煎目くらいまでで殆どがでてしまうことを考えると効率よく浸出させるためには急須のブランコ運動が必要であると考える(急須の中の茶葉をみると外側の成分は流れているものの中心部は色が 多少濃く残っていることからもその中心部のエキスを外に追いやる意味でも必要)
またお茶を審査茶碗で鑑定するときの難しさもこのかき混ぜ具合により味が変わってしまうので注意が必要である(もっとも5分も熱湯に漬けておけば一緒になるかな)、また急須での審査は確定されていないが同じ条件でみるときは急須は振動させない方が無難である、なぜなら振動の具合によりどうにでも変化してしまうからである。(審査の方法を一般家庭まで拡大して正しい淹れ方としているテキストもあるが茶製造方法や改善された急須の進歩によりすべてに当てはまらないと考えている)、また「嗜好性」の問題がでてくると事は厄介である、濃いのが好きな方は急須をブランコ運動させる、濃いのが好みでないかたは急須を振動させないという淹れ方も可能である。
私は効率よくお茶の成分を摂取したいので急須の往復運動(ブランコ運動)をお勧めしたい派である
※テクニックとしては急須を水平に回さなくても、注ぎ分けるときに傾いた急須を少し勢いをつけて水平に戻すとそれだけで効率よく成分はでるし急須は詰まらなくなる、 茶碗1個でも数回に分けて回し注ぎを行えば自然にこの動作は伴うことになると思う

普通蒸しや若蒸しのいわゆる形状のお茶はその淹れ方をみると産地によっても異なるが「茶葉は多め一人分でも10g、、」としてお湯の投入量も少なめであり浸出時間も比較的長いのだ、つまり急須をゆすらなくても間違いなくコクのあるお茶は淹れることができ、このような多めの茶葉を使用して震動すると思った以上に濃い渋みのあるお茶ができてしまう、私は茶葉にあった淹れ方を原則して自分の嗜好にあった淹れ方をすればいいのだと思っている。事実、店で試飲してくださるお客様に様々なお茶、温度、急須の振動など試すとまったく様々な反応が返ってくるのだ、その人の嗜好にあった淹れ方がいちばんいい淹れ方であり指導(科学的な根拠は必要)はいいが強要はしてはいけないと思っている。
 
追加実験 
 実際に飲んでいる茶葉での実験です

 茶葉がお湯に浸っている時間を同じにして3通りの試行(A,B,C)を行い、カテキン、カフェイン、アミノ酸の測定をガスマトで分析した。(「急須は振らない方がいい」と伝承されてきたが科学的根拠がないまま「そう云われてきた」だけではないだろうか?、、そこで分析したみた、たぶん誰もしなかった実験だとおもう 2012年試行)使用茶:深むし茶
 

Aの淹れ方
 50秒後に急須の振動なし一気に1回で注ぐ
 

Bの淹れ方
 30秒後から急須を振動(8回程度に分けて注ぐ)しながら残り20秒の間に注ぐ
 
Cの淹れ方
 30秒で8回振動させ50秒で一気に注ぐ

簡単であるが結果を記しておこう
1、一度に注ぐのではなく「B」の「数回に分けて注ぐと旨み成分が多い」という結果

2、カテキン類などポリフェノールを多く摂りたければ「C」のように急須の中で振ってから出すと良い
 

※茶葉をうまく振動させてあげると旨みとコクがあるお茶が出来上がる。
温度で成分の出方が変わることはもちろんだが急須の動作で成分に変化があることが証明できた。つまり同じ茶葉、お湯、量を使っても人によって出来上がるお茶の成分の構成が違ってくることが想像できる、現段階では急須の振動(振り方)でアミノ酸が茶葉より浸出される理由はわからない。ただ推測できることもある、茶のアミノ酸類は根から吸収され茎を取って葉よりも茎に多く蓄積されている(事実、茎茶は甘い)。
製造工程で茎と葉が揉まれて茎の白っぽい色が葉の緑色に染まるころが取り出し時期とすると、茎のアミノ酸が葉の表面付近に浸透する、この浸透したアミノ酸類を戻してあげる工程が飲むお茶であるから、触れているお湯に成分を移りやすくする行為が「振動(急須を振る)であるとともに、徐々に急須の中のお湯が減少する淹れ方をすることで結果的に増えると推測する。

追記:水出しのお茶での実験から、「一滴一滴を上からたらす方法」、「氷を茶葉の上にただ置いただけの方法」

ではお茶の成分が100%浸出されない、実際にやってみると均一に茶葉に水分がいきわたらないのだ、また茶葉は重なって置かれるため上層の茶葉は開いて成分がでても下層の茶葉は上からの重みで茶葉が開いていないことがわかった(これは玉露好きな茶葉の効率的な飲み方で使用する平たい急須が適しているからも納得できる)、つまり一見うまく浸出できているかのようにみえてもすべての茶葉が開いているわけではない、そのようなことから推測すると急須を多少揺らすことで開いていない下層の茶葉にも十分に水分を吸わせてあげるテクニックが必要かと思う

 


 30秒後から急須を振動(8回程度に分けて注ぐ)しながら残り20秒の間に注ぐと
急須の振動がないAに比べ「一煎目にうまみ成分が多いという結果」になりました(福山堂製茶提供)
※他の成分「カテキン」「カフェイン」も同時に測定しています

急須の振動 一杯の一人分の茶を作る場合でも写真のように数回に分けて注ぐと美味しく入る。
急須の振動は大切な要素でありこの振動で悪くもなり良くもなる。

カゴアミ急須での淹れかたはこちら




 

人の手は2本しかない、でも同じように淹れて味を比較してみたい! 考案した淹れ方です
審査茶碗でアミで漉くってやる方法もありますが、これは皆さんが一般的に飲む方法とはかけ離れているため最終確認は実際には急須で行います。
※昔、3個の急須を板に固定しハンドルを廻して同時に注ぐ装置を自作いたしましたがセットに時間がかかるため今はこの方法でやっています。
2種類は普通に
  3種類は?
(急須のフタは取り外しておきます)
  4種類は? (5種類以上は通常の急須ですと安定しないので無理でした)
 

さらに極めると茶葉の量は?

私が配達に行った先で事務員の方に一番よく聞かれる事は
「会議で全国から集まるときにさすが静岡だといわれる美味しいお茶を出したい、どうすればよいでしょうか」
といった内容である。

いつも淹れている人数だと担当の方も茶葉の量と湯量は想像がつくらしいのだがいつもの人数が3人だとすると5人になったときや10人くらいになったときに茶葉の量、湯量、がわからないといった内容である。たしかに人数と茶葉の量は正比例ではないので注意したい。


また「美味しい淹れかた」のパンフなどをみても変化する人数と茶葉の量まで記入してあるシオリは私も見たことがないし私自身聞かれて即座に何グラム使用したら失敗なく美味しくだすことができるのか一度使用する茶葉とお湯などで試行をしなければわからないのが実態である。

そこで約二年間かけて店頭でお客さんに出しては味をみてもらいグラフにプロットし相関関係から導き出し数式化した図が下の図である。
(これは思った以上に大変な作業であった特に湯温は季節により湯冷まし効果が違うため難しい作業である、また濃さの好みもあり相関を求める事は無理かと思われたがプロットしていくと傾向は把握できた、おそらく数式化したのは 私どもが初めてであろう)
当初いろいろと細かいパラメーターを数式にあてはめて計算式をだしていたが複雑すぎて実用的でないため以下のように簡略化した。 (湯温度は72度固定は茶のタンニンが溶け出す温度であり温度が高いと一気にでて渋くなるのでご注意、またその年の茶葉の状態で最適ないれかたは微妙に変化する)

例えば一人あたり入れる湯量が60cc(実際に出来上がる量は茶葉のグラム数の約4倍湯を吸ってしまうので多少少ない)とし3人前淹れるとすると

 
y=4√x   yは茶葉の投入グラム数  xは人数 ※投入湯量60cc

となり あてはめて 4√3 で 4掛ける1.732でyは6.928g≒7gとなり急須に投入する茶葉の量は7gあれば良い。

また人数が増えて10人ならば 4√10 で 4X3.16=12.64g となるので投入茶葉は13gとなる。
(√10 はwindows標準の電卓を起動し 10 を押して sqrt キーを押せば求められるが下のグラフを印刷して給湯室に貼っておけばすぐに役立つと思う。尚湯量70ccのときは80ccに変更しても味に大差はないのでご参考までに追記しておく、印刷用画像こちらから)

 

さらに美味しくいれるには重要な要素がもうひとつある
それは、「注ぎ分け時間」である。
「茶葉の量」 「お湯の温度」 「お湯の量」 「浸出時間」の4個の変数を変えることにより茶葉の特徴を引き出す事ができるがさらに重要なのは 5つ目の要素「注ぎ分け時間」も考慮したい。        
 
つまり急須の中では浸出時間をすぎても茶の成分の溶出は継続しているため個々の茶碗に注ぎわける時間も考慮してなくてならないのである。(このへんの事も書いたマニュアルはない)
実際にいれてもらうと個人個人皆違っている、早く注ぎ分けできる人、ゆっくりと注ぐ方などまちまちである、速い人は味が薄くなるしゆっくりとした人は濃くなる。
※私はチョット薄すぎたかなと思う時はここの「注ぎ分け時間の調整」で臨機応変に対応している。

さあ「注ぎ分け時間」もグラフ化して考えよう!

このグラフも上記グラフと同様に実際に60ccの湯量で測定し30程プロットし相関関係を割り出したものである、人数と時間は以外にも比例している事がわかり下記の数式となった。

     
y=5x+35 となり xは人数 yは時間(秒) ※深蒸し茶専用時間

例えば3人だと yは 5x3+35 で50秒となる、この50秒とは「深蒸し茶」を使用し総浸出時間(急須に初めて湯を入れた時から個々の茶碗に注ぎ終える時間)をしめしている。
ここでは急須に初めてお湯を入れ、蒸らし時間が20秒としているのでy値50-20=30秒が注ぎ分け時間となる、つまり3人前は30秒で注ぎ分けると美味しく出来上がる。
※もし、蒸らし時間が30秒経った場合は50-30=20秒で注ぎ分けなければならない。

深蒸し茶は茶葉の粒度が細かいので蒸らし時間は20-30秒で良いが粒度の荒い普通蒸し煎茶の時は蒸らし時間は長めとなるので y=5x+35 の35を65と入れ換え y=5x+65 とすれば良い(この時は蒸らし時間は約60秒)
また10人以上くらいになると注ぎ分けはスピードがないと苦渋味がでてきてしまうので時間との勝負となる。また湯量が70cc位になってもこの計算式で対応できる。

※湯温72度は渋味、苦味は主に「カテキン」の溶出量を制限し、低い温度でも溶け出すアミの酸(旨み甘味)を引き出せる温度とした 、したがって80度のお湯を使用すればこのグラフよりもっと短い浸出時間でいれなければならない。

注ぎ分けのテクニックが必要な訳
注ぎ分けは専門用語で「廻し注ぎ(まわしつぎ)」という、以前「まわしつぎ」して下さいネと指導したら急須を茶碗の上で抹茶の席で飲むと時に茶碗を回転させるように器用に急須を回した方がいらしたが、やはり言葉だけでは難しいと実感した。要は「廻し注ぎ」とは均等にそそぐテクニックであるがポイントは往復運動で下の例のように茶碗3個の時は1→2→3 と注いだら今度は 3番目の茶碗から注ぎはじめ 3→2→1 と戻る。そうするとシュミレーションでは濃度の合計が7となり均一化が容易となる、最初にもっどて注いでしまうとごらんのように濃度はバラバラで3番目の茶碗が濃くなってしまう。(このシュミレーションは私の小学生の息子が考えてくれたもので説明するのに重宝している)。
 
※茶碗が2個ならば時間がかからず何度も往復できるので交互でかまわないですが原則は覚えておいてください。

ここまでくると「どんなタイミングで濃くなっていくのか、、」調べたくなってきた。

以下は茶碗6個を横にならべて2秒間隔で左側から注いでみた。

見た目では左から1、2、3、4番目までは同じ濃さのようにみえるが測定機で計ってプロットした。

左からP、Q、R、S、T、Aはそれぞれ茶碗の123456となりT、Aつまり4,5番目から急激に濃度が上昇しているのがわかった。何度か実験し数式 y=2χ2xχ+500 の相関が得られた。
もし8杯目の茶碗があれば1524ppmの濃さになると思う、つまり注いでいるうちに急須の中で浸出が進み10秒で濃度差がy(P)-y(A)=500-932で432ppmも違ってくる、またこの状態で廻し注ぎを行ってみたところ1の茶碗はB点の濃度となり2の茶碗はC点の濃度、3の茶碗はD点の濃度となった、この3点はほぼ100ppmぐらいに収まり濃度の差が少なくなることがわかる、このように廻し注ぎの効果は大きく
濃度は比例ではなく二次関数てきに急激に濃くなるので必ず廻し注ぎが必要となる。
またC、D点は飲んで濃さの違いはないがB点とD点は違いが感じられるので一往復だけでは完璧ではなくできれば二往復できればなお良い思う(ただし総浸出時間とのかねあいもあるのでスピーディーに!)。
 

茶碗20個を前にはたして美味しく淹れれるか、、



さらに極めると茶碗は?

 聞いてみると圧倒的に「コップ型の湯飲み茶わん」が多くしかも大きくて厚いのが多い、コップ型は深いので入れるとお茶の色が判りにくく、目に入ってくる情報が半減してしまい、見た目にも色が悪くしかも香りが拡散しない、紅茶用カップとコーヒー用カップがあるように形がその飲み物を最大限に引き立ててくれるのである。

 実際お茶の審査などに使用される器は白い磁器製で光の透過を考えて薄く出来ている(その性格上、煎茶茶碗としては大き目である)。
 是非、コップ型湯飲みの方はこのさい香りの拡散が多い朝顔型(口が広がったもの)で内側が白い煎茶茶碗で試してみて欲しい。

※お勧めは磁器(じき)製品で光が透過する薄いものならなおさらOK、もし手元になかったら紅茶のティーカップでも代用出来ます。また内側に多少でも柄があると湯量の目安になりいつでも美味しいお茶を淹れるコツとなる。
例として以下のようにすると良い
茶碗の重さを計る、98gをしめしている
ゼロ点補正をして表示をゼロにする
湯を70になるまでいれると水に比重は 約1なので70ccとなる。このときお湯ならば茶碗の内側に柄があれば柄のどの位置でお湯が70ccであるか把握でき次回からは計りを使用する必要はない。(この茶碗では透明のお湯では撮影しずらいので色を付けているが丁度、葉の下側の部分で70ccである、約7分目で茶碗の容量140ccの半分の量である)
このハカリはお湯の量のほかもちろん茶葉の量の確認にも重宝である。
※大匙ならば何杯で何グラムか御使用の茶葉を計り記録しておけば其の都度はハカリで計らないでも結構!



 

 

さらに極めると沸かし方は?

お茶に使うお湯はどの茶の場合も、必ず新鮮な水を一度ガスの火力で沸かし塩素を除去し、完全沸騰したお湯をポットに移して使います。いつでも適温を保つ電気ポットは俗にいう【湯疲れ】が生じ、お湯そのものが美味しくありませんし時々お湯に匂いが付いてしまいます。なお日本の水道水は比較的安全で美味しく飲めます.

※中国では第一沸は「カニの目のような泡」、第二沸は「魚の目のような泡」、第三沸は「松林に風が吹くような音」と表現し完全に沸けばこのような音がすると出ている(鉄瓶などの側面に描かれた絵に松林が多いのはこのためである)

もっとこだわるならば急須は?

ポットのお湯を1合から2合までの『とこなめ急須』(陶器製で酸化鉄が塗ってあるのでお茶が美味しくでます)に少な目にいれ茶碗に少しずつ注ぎ分け、最後の一滴までしぼりきってください。 
「間違いだらけの急須選び」はこちら

急須の弱点と対処方法はこちら

ま と め

以上の7点(湯の量、湯の温度、茶葉の量、総浸出時間、茶碗、沸かし方、急須)さえ注意すれば同じお茶が見違えた様に美味しく味わえます。

上記の廻し注ぎ方式では一回で(一煎目で完了)していることを前提としている方法であるが想定してるシチュエーションとしては一煎目で人数分を淹れてしばらくしてから、例えばお菓子を頂いてから二煎目を頂くという感じです、しかし待てよ日本茶って二、三煎目まで成分が出るんじゃナイ?茶葉を使う量を軽減したいと考えているかた、、そうなんですねお茶は二煎目で完了したい方は茶葉が すくなくて済みます
上記計算を応用します、5人前(60ccx5人=300cc)ならば二煎目で作るとして5人÷2で2.5人分のグラム数6.5gを得る、同じように総浸出グラフより2.5人で約50秒を得る。ここまでで茶葉6.5g 総浸出時間50秒の値がわかったので72度のお湯を約150cc(二回で淹れるので300ccの半分)を入れ一煎目50秒でそれぞれの茶碗に注ぎわける、次に残り150ccで二煎目をいれ、50秒で茶碗に継ぎ足す。 (二煎目は浸出時間が かなり短めでok!です 葉の状態にもよりますので何回か試行してください、投入のお湯の量も少な目で) 。
この方法は節約したい方向きですが「一煎目で完了60ccx5人=300cc」、「二煎目で完了60ccx5人=300cc」としたい方はやはり y=4√5人 で約9gは必要です
 

 追記
私の所では煎茶茶碗でおだししている、いっぱいまで入れて60ccだから普通は約8分目程度のお湯を使用るので40cc位でいつも一定している、つまり変動要因が少ないわけで、これは美味しいお茶が出来上がる要因である。しかし家庭ではどうだろうお湯の50ccは少ない!だいたい湯のみを計るとお湯の量は約100cc位なので5人前を作ろうとすると少なくても500cc以上は必要である、よくある問い合わせに大き目の土瓶をくださいという方がいるが、よく聞くと一気(一煎目で一度)に8人分くらい作りたいという、湯のみの量は八分目くらいで100cc位、、だから大き目の800から1000cc位の急須や土瓶、これは私でも美味しく淹れる自信なない、かなり難しい。

           それではどうするのか?、、

             失敗しない方法のひとつは

                50ccの茶碗を10杯分つくるイメージで淹れればいいのである(5人の場合)

つまり、一気に一度に作らないで、いつも使っている2合程度360ccくらいの急須で一回目は茶葉で上記のとおり二煎目まで淹れ、二回目は茶葉を新規に替えて二煎目まで淹れる。注ぎ分けが難しい場合は別途大き目の土瓶をサーバーのように一回目と二回目を貯めておいてから5つの茶碗に注ぎ分ける。

このようにする納得のいく味と香りで美味しく淹れることができる。

人数が多くなった場合でも魔法瓶をサーバーにしあらかじめ作っておけば冷めなくてよいし、作り手を2人3人と増やせば短時間に対応でき色も変わらない

(お湯で淹れたお茶は短時間で酸化し色香りとも変化するのでなるべく早く使用するのがコツ)


 

 そしていつでも美味しく飲みたい方は日々試行錯誤を繰り返しご自分の嗜好にあったお茶を淹れる技術を身に付けてください。
※温度計(300円程度)、デジタルハカリ(家庭用で十分1000〜2000円程度)は是非揃えておきたい必須アイテムであると思う。
※茶葉の種類により「大匙山盛り何杯で何グラムです」といくら呪文のようにとなえても計りで実際使用している茶を測定しなければ美味しい茶ははいらない、是非一度、使用茶で計ってみてそれが大匙で何杯小匙で何杯かを把握してください。

※一般に言われている事ですが高級茶ほどぬるま湯で、少ない湯量でゆっくりいれ、下級茶ほど高温で多目の湯を使って短時間にいれます。これは高級茶の旨みはアミノ酸によるものでこの旨み成分が高級茶は多く含まれているために高温でいれるとタンニンが出過ぎ うまみが感じられないからです、しかし実際に温度を調整してやってみると並のお茶も、安いお茶も茶の量を少し多く使用し温度を低く(70℃位)にしていれれば結構美味しく出ます。ニ煎目はタンニンが出過ぎると苦みが強くなるので、早めにつぎきることがポイントです。

いままでは、「注ぎ分け(廻し注ぎ方式)」を醍醐味としているが5人位以上になると難しくなる
そのような時はサーバー方式を活用するとよい


サーバー方式とは私の表現であるが、いわゆる廻し注ぎをしないで5人淹れる時でも一度5人前を大きな急須やポットに貯めておき出す方法である、こうすることで 廻し注ぎのテクニックが必要なくゆとりをもって対応でき均等な濃度で配分できる。

サーバー方式は多人数の接待に向いている。事務所、食堂、旅館、接待など大勢を相手に少しでも美味しくだしてあげたいと思っている方はこちらをごらんください、参考になるかと思います。
※上記の廻し注ぎ方式を応用して2回に分けて淹れる方法一つの急須をサーバーにして使用しても良いかと思いますがその場合は5人前(60ccx5人=300cc)ならば二煎目で作るとして5人÷2で2.5人分のグラム数6.5gを得る、同じように総浸出グラフより2.5人で約50秒を得る。ここまでで茶葉6.5g 総浸出時間50秒の値がわかったので72度のお湯を約150cc(二回で淹れるので300ccの半分)を入れ一煎目50秒でサーバーに移す、次に残り150ccで二煎目をいれ、50秒でサーバーに足す計10人分(茶葉が水分を吸うので約260ccのお茶が出来る)を作る方法が良いでしょう。  二煎目は浸出時間が短めでもok!です

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廻し注ぎ方式は実験中にわかった事だが高級茶葉を使用した場合その良さが 人数が増えると出し難い、一煎目勝負でお茶の旨み甘味をバランス良く引き出してあげられる限界は一人の淹れ手で5,6人迄である事も判明した。会場等で大人数に対して美味しくうまく淹れたい時は5人前を1サイクルとして葉を入れ換え接待すると喜ばれる。(何故煎茶セットは5人前で構成されているのか、、もしかしてこんなところにも理由があるのかもしれない)

※旅館やホテルで来てくださったお客様に「welcome drink」(宿泊者に対するサービスで、到着時に無料で飲める飲料) お茶では「ウエルカム ティー」を提供する場合に最初が肝心である 、最初に口にした飲み物に対しての第一印象は重要である。
従っていつ到着するかもしれない方に「おいしいお茶をスピーディーにださなけらばならない」こんなときは「出汁茶」(だしちゃ)をあらかじめ作っておくと良い。

忙しい時にも美味しくだせる方法が「出汁茶」である、これは私が名付けた方法であるが「濃縮還元ジュース」に似ている。つまり予め旨み成分たっぷりのお茶を準備しておきお客様がいらっしゃった時にお茶で割って出す方法である。
作り方:大目の茶葉で水で作っておくことがポイント
1、茶葉は20g 水を300cc入れ約30分以上放置し濾し、エキスを作る、
  約30分も経てば渋み成分も浸出され甘みだけでなくコクもでてくる。保存は冷蔵庫で8時間くらいは色が変わらない

2、このエキス約15cc にお湯30ccで薄めて出来上がり。
 お湯は冬場は器が冷えているので熱湯でも可 夏場は80度くらい 氷水で薄めれば水出しとしても可能 ※茶碗のサイズが大きいときは配合割合を変える事

※お湯で薄めるか、薄いお茶で薄めるかの判断は茶葉によって違うので試行必要


※当ホームページ内容を掲載、使用時はお電話下さいませ。

◆お茶のいれ方番外編 その1(目からウロコが落ちるかも?)
 普通お茶をいれるときは、急須に葉をいれてからお湯をいれますが
 お茶が
どうしても美味しくはいらないという方はこの順序を逆にして みて下さい。
 【方法】
 急須にお湯を入れてから茶葉をいれてください、湯冷まし効果があるため想像していた味よりはるかに上手にでます!但し注意することは
 湯気で缶や袋の茶葉が湿気ないように茶さじ、スプーンなどを使用 して計ってから1回で急須に投入してください。

 今まで渋くなったりして美味しく出ない方は最終手段でこの方法を是非試してみ て下さい、おや!と思うほど案外美味しくでたりします。
◆お茶のいれ方番外編 その2
 お茶が詰まってうまく淹れれない方は是非ごらんください、、、
 美味しいお茶をいれるにはテクニックも必要です!
    
茶碗や湯のみに注ぐ直前に急須のフタを外して注いでください、フタがなければ中の茶葉がアミにどのくらいかかっているか、被さっているか判断できます。つまり急須の傾きにより詰まりをなくせるためお茶が必要以上に濃くなることを防げます。
慣れればフタをしていても茶葉がどのように急須の中で運動しているかわかってきますのでフタをしていてもOKです!

    

◆案外知らないお茶の保存方法について

◆冷茶の作り方実用編はこちら


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